転職エージェントの本質的な価値は、期待値調整だ!


今日は、転職エージェントの本質的な価値についてお話をしたいと思います。

「転職エージェントがいる意味って何なの?」と疑問に思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

転職エージェントのことがますます腹立たしく思えてくるかもしれませんし、少しは存在意義を感じていただけるかもしれません。それではどうぞ。

一番大事なのは「マッチング」

転職エージェントの仕事にとって一番大事なのは、求職者と企業のマッチングです。

求職者の希望と企業の希望をつなぎ合わせ、お互いが両想いになるようなマッチングを実現することが、転職エージェントのミッションです。

求人と求職者のマッチング率が高ければ高いほど多くの転職(企業の視点では採用)を実現することができ、売上につながるからです。

そのため、転職エージェントが業績を向上させる上でとても大事になってくるのが、この「マッチング率」をいかに高めるかということになります。

人材を採用する企業の視点に立てば「求人の充足率」という指標になりますし、求職者の視点に立てば「登録者の転職実現率」という指標になります。

そして、マッチング率を高める上で転職エージェントが果たしている重要な役割が、「期待値の調整」です。

極端な話、転職エージェントの価値はこの「期待値の調整」に集約されるとも言えます。マッチング率を高める上では、とにかくこの「期待値の調整」が必要なのです。

それでは、期待値の調整とは、どういう意味なのでしょうか??

期待値の調整とは?

期待値の調整とは、分かりやすく言うと、下記の作業を指します。

  • 企業への働きかけ:自社の採用力を客観的に把握し、実際に採用できる人材ターゲットを理解してもらうこと。
  • 求職者への働きかけ:自分の転職市場における市場価値を客観的に把握し、実際に転職できる企業ターゲットを理解してもらうこと。

なんだか夢のかけらもない話になってしまいましたが、転職エージェントの仕事の本質は、上記のように企業側に対しても求職者側に対しても、採用や転職に対する期待値を調整し、現実的な採用プラン・転職活動プランを作ってもらうことなのです。

その機能を担うのが、転職エージェントの重要な役割となります。

一般的に転職エージェントが仲介しない自然状態においては、企業は自社の採用ブランド力では獲得できないような人材を求め、その逆に求職者は自身の市場価値では転職できないような企業への転職を希望します。

お互い高望み状態というやつです。

そして、お互いに「採用が上手く行かない。」「転職活動が上手くいかない。」と悩んでしまうわけです。

この状態を分かりやすく図にすると、下記のようになります。

転職エージェントの期待値調整図

上記の図は、転職エージェントが期待値の調整をする場合としない場合のマッチングの状態をモデル化したものです。

実際には求職者の転職基準は人によって大きく異なりますし、企業の採用規準も会社によって大きく異なりますから、市場全体をランクで切り分けることはできないのですが、ここでは分かりやすくするために、ある一定の基準で見たときに、求職者市場にもAランクからEランクまでの人材がいて、企業の採用市場にもAランクの企業からEランクの企業がいたとします。

下の図を見て欲しいのですが、転職エージェントが期待値を調整しない段階では、たとえばDランクの人材はCランクの企業への入社を希望しており、Cランクの企業はBランクの人材を採用したいと考えているといったことが頻繁に起こります。

期待値のミスマッチ状態

これでは、お互いの期待値がミスマッチ状態となっていますから、求職者はいつまでたっても選考に通過できず、企業はいつまでたっても求める人材が応募して来ないと嘆くことになります。

そもそも求職者は、少しでも良い企業に良い条件で転職したいと考えていますし、企業は少しでも安く優秀な人材を確保したいと考えていますから、お互いの期待はお互いに上のベクトルを向いてしまっているのです。

しかし、これではいつまでたってもマッチングはできません。つまり、転職も決まらなければ、採用も実現しないのです。

この状態を解消するために、転職エージェントは求職者側・企業側にそれぞれ期待値の調整を行います。

求職者側に対する代表的な期待値の調整方法としては、下記の方法があります。

  • 面談時に、転職市場の現実を伝えて、希望条件を緩和しないと紹介できる求人がないと説得する。
  • 説得ができない場合には、実際に応募して選考に落ちるという経験を積んでもらい、現実を理解してもらったうえで現実的な転職先を紹介する。

転職エージェントに呼ばれて意気揚揚と面談に行ったら、偉そうなキャリアアドバイザーにこれまでの経歴をボコボコに詰められて腹が立って帰ってきたという経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、恐らくそのキャリアアドバイザーの狙いは、上記のようなことです。

逆に、企業側に対する代表的な期待値の調整方法としては、下記の方法があります。

  • 求人条件のヒアリング時に、転職市場の現実を伝えて求人条件を緩和してもらう。
  • 求人ターゲットが変えられない場合には、求人条件の待遇面などを改善してもらう。
  • 説得ができない場合には、実際に求人活動をスタートしてみて、その条件では応募がほとんど来ないという経験を積んでもらい、現実を理解してもらったうえで現実的な採用プランを提案する。

厳しい見方かもしれませんが、これが転職エージェントの本質的な価値だと思います。

こんな話をすると、「いやいや、転職エージェントは個人の希望を実現するのが仕事だろ!」と突っ込みたくなる方がほとんどだと思います。

「そんな落としどころが決まっているようなキャリアコンサルタントには頼りたくない。」「もっと自分の夢の実現に向けて一緒に頑張ってくれるキャリアコンサルタントがいい。」

もちろん、それはその通りです。そもそも転職したいと思うのは、現状を改善したいからですし、今よりも良くなりたいからなのです。誰だって憧れの企業に行きたいのです。

しかし残念ながら、現実はそう甘くありません。現実には、Dランクの人材はDランクの企業にしか入社ができませんし、Cランクの人材はCランクの企業にしか入社ができないのです。

現状Dランクの人材がもしBランクの企業に転職したいのであれば、その方法は一つしかありません。自分自身がDランクからBランクになることです。

そして、転職活動は、スポーツで言えば「試合」ですから、持っている力を発揮する場です。持っている力自体を伸ばすためには、「練習」が必要です。

つまり、現状のランクよりも高いランクの企業への入社を目指すのであれば、転職活動をするのではなく、日々の業務や自発的な学習を通じて自身のスキルを高め、市場価値をあげていくしかないのです。

(※求人の需給バランスが崩れて売り手市場となった場合には、企業のベクトルが上向きから下方向へと下がっていき、「ラッキー転職」ができることもありますが。)

もちろん「試合」でも人間は成長します。厳しい転職活動を経て人間的に成長する方はいっぱいいます。

しかし、それは履歴書や職務経歴書に書けるような市場価値の向上とは言えません。

「面接をたくさん受けたことで提案力が高まりました。」などという自己アピールが通用するはずはないのです。

ですから、キャリアコンサルタントと話をする際に意識して欲しいのは、むやみやたらに「あなたの希望を叶えます!一緒にがんばりましょう!」と連呼してくるアドバイザーは、実はあまり信用できないということです。

本当に優秀なアドバイザーは、もしあなたが現状はDランクの人材で、Bランクの企業への入社を希望しているとしたら、「一緒に頑張りましょう!」などと軽々しい言葉を投げかけたりはしません。

「現状のあなたのスキルでは無理なので、もしその企業に行きたいのであれば、今は転職活動をするタイミングではありません。あと2年でこうしたスキルを身につけて、2年後にもう一度相談しに来てください。」

などのように、転職活動を進めるのではなく市場価値の向上に向けて取り組むようにアドバイスしてくれるはずです。

このように、高いマッチング率を実現できる、つまり相思相愛の関係を作り出すのが上手な転職エージェントは、期待値の調整が上手なのです。

カリスマ採用コンサルタントの期待値調整術

ここまでの話を聞くと、なんだか身も蓋もない話のように聞こえるかもしれませんが、実はこのマッチングと期待値調整の話は、「長く働く」ということを考える上でもとても重要なポイントです。

昔、転職エージェントで活躍しているカリスマ採用コンサルタントの方が、こんなお話をしていました。

「企業から採用の計画を聞くと、大体無理な要望が出てくる。そんな年収条件で採用ができるか、と突っ込みたくなるような人材要件を平気で要望してくる。だけど、企業にとっても人材採用はとても重要だから、少しでも優秀な人材を獲りたいという気持ちはよく分かる。そこで、企業の採用担当者に期待値を調整してもらうために、こんなたとえ話をよくしていたんだよ。」

~以下、とある日の担当企業の人事部長とのやり取り~

採用コンサルタント:
「ところで部長、少し採用と話は変わるんですが、好きな女優さんっていらっしゃいますか?」

企業の人事部長:
「うーん、M嶋N子がタイプだね。」

採用コンサルタント:
「なるほど、分かります。たしかにとても綺麗ですもんね。ところで、部長の奥様って、M嶋N子に似てらっしゃいます?」

企業の人事部長:
「いやー、全く似てないよ(笑)。」

採用コンサルタント:
「そうですか〈笑)。でも、とても素敵なご家庭を築いていらっしゃいますよね。」

企業の人事部長:
「まあ、妻にはとても感謝してるしね。」

採用コンサルタント:
「採用も、実はそれと近いと思うんです。どんな人材が欲しいかと言われると、そりゃ女優クラスの人材が欲しいんですが、じゃあ仮にそんなハイクラスの人材が採用できたとして、本当にうまくいきますかね?会社として上手く能力を活かしきれない可能性もありますし、本人も周りとのギャップを感じてすぐに辞めてしまう可能性もありますよね。」

企業の人事部長:
「それはそうですね。」

採用コンサルタント:
「結局、採用ってそんなものだと思うんです。憧れの女優を探すのではなくて、フィット感があって、この人となら長く働けそう。そんな人を探すのが、本当は一番いいのかもしれません。部長と奥様が仲良く続いていらっしゃるように。今、御社が本当に採用しなきゃいけないのは、M嶋N子じゃなくて、奥様のような方なんじゃないでしょうか?」

企業の人事部長:
「たしかにそうだな。優秀すぎる人がうちに来ても、がっかりしてすぐに辞められたら叶わないし。もしそうしたハイクラスな人材をとりたいのなら、うちの会社がハイクラスにならないと、結局はだめだということだよね。」

採用コンサルタント:
「その通りです。だから、もし「今」採用する必要があるのなら、募集条件を緩和したほうが結局は上手くいくと思います。逆に、「今」ではなく、採用する人材の「質」にこだわるのなら、企業としての「採用力」を上げるためのお手伝いをさせてください。」

企業の人事部長:
「なるほど。それでは、憧れの女優を追いかけるのは辞めて、条件を少し緩めよう。うちにフィットするような人を紹介してください。」

採用コンサルタント:
「分かりました。ありがとうございます。」

~というわけで、無事に期待値調整完了。めでたしめでたし。~

長くなりましたが、その売れっ子コンサルタントの方は、こんな感じで採用活動を「憧れの女優」と「妻」という分かりやすい対比に置き換えることで、上手に企業の採用に対する期待値を調整をしていたと言うのです。

上記のやり取りは極端な例ですが、転職活動をするにあたってとても大事な本質を突いています。

それは、「あなたが行きたい企業が、あなたにフィットする企業とは限らない」ということです。

仮に、小手先の面接テクニックや企業研究で鎧を身に付けて、自分のレベル以上の企業に入社できたとしても、その先にはとても辛い毎日が待っています。

評価は上がらず、居づらさを感じながら働く羽目になるかもしれません。

また、その逆に、自分のレベルよりも低い企業に入社してしまうと、これはこれで不満が溜まることになります。

大事なのは、「自分の価値観やスキルにフィットした企業」に入社することなのです。

転職エージェントの期待値調整機能は、なにも求職者や企業の希望を打ち砕き、現実を受け入れさせて強引にマッチングするためにやっているわけではないのです。

本当の意味での「転職の成功」や「採用の成功」を実現するためにやっているのです。

本当の意味で転職に成功するために

その転職が成功したかどうかは、転職が決まった時点では分かりません。

転職エージェントで働いていると、憧れの企業に入社できたと喜んでいたものの、1ヵ月で辞めてしまったというようなケースに毎日のように出くわします。

希望企業から内定がもらえた。入社ができた。それだけでは、まだその転職が本当に成功なのかどうかは分かりません。

実際に入社して一定期間働き、企業にしっかりと馴染んできた頃、ふとした瞬間に「この企業に転職して本当に良かった」と感じる。

これが、本当の意味での転職の成功です。

転職の成功を実現するために大事なのは、自分にフィットする企業と出会うことであり、そのプロデュースをするのが、転職エージェントの仕事なのです。

「転職エージェントの本質的な価値は期待値調整だ」というのは、決してネガティブな意味ではなく、ポジティブな意味でのプロデュース手法なのです。

おまけ

今回の話は、企業も求職者も基本的に上のベクトルを向いている、という自然状態を仮定していますが、実際の転職市場においては、逆のパターンもあります。

具体的に言うと、実際には自分自身の市場価値を本来の価値よりも低く見積もっている方や、自社の採用力・ブランド力を過剰に低く評価している企業なども存在しているのです。

こうした場合は、「逆の」期待値調整をすることになります。

転職エージェントにとっては、「逆の」期待値調整ほど楽なことはありません。

「あなたは転職すればもっと年収が上がりますよ」と言えば誰でも嫌な気分はしませんし、「御社であればもっとハイレベルな人材も採用できますよ」とアドバイスすれば、人事部長は鼻高々になることでしょう。

しかし、転職エージェントの中には、こうした本来の市場価値を伝えることなく、あえて期待値調整をしないまま転職活動を進めさせて、手堅くマッチングを実現してしまうような会社も存在しています。

本人が自身の市場価値に対して非常に控えめな要望をしているのに、わざわざその要望を高くするようなことをしてマッチングを厳しくする必要はないからです。

しかし、それも、転職エージェントとして本来あるべき姿ではありません。

こうした悪徳エージェントにつかまって、自分が秘めた可能性に気付けないままありきたりな転職をしてしまうリスクを避けるためには、とにかく複数のキャリアアドバイザーに話を聞くことで、自分自身の市場価値を客観的に正しく把握する必要があります。

優れたキャリアアドバイザーは、自分でも気づけないようなキャリアの可能性を示してくれますので、ぜひそうしたアドバイザーに出会えるまで、色々な転職エージェントに相談してみるのが良いでしょう。

転職エージェントの本質的な価値について、少し考えが深まりましたでしょうか。

ちなみに、「期待値の調整」は、人を喜ばせる上でとても大事なキーワードです。

転職に限らず、仕事の場面などでも常に意識していきたいですね。

それでは本日の記事は終わりにしたいと思います。

あなたの転職がどうか成功しますように。


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